舘野さんの2023年に見た映画トップ10
2023年に観た映画
BEST10に満たず、年内に観てよかった7作品とそのほかたくさんになりました。
おすすめできるかどうかも不明で投稿するのが不安ですけれども、年末ということでお許しください。
その1■不穏で重厚で映画を観たと実感できる作品群■
【1】キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン(2023年)
スコセッシ節が冴えわたる一作。老いてなお盛んとか言っている場合じゃないくらい、まだまだ新作をつくる気概あふれるスコセッシの映画を観ると、僕も年齢を言い訳にしている場合じゃない気にさせてくれる。ギャング・オブ・ニューヨーク以降、同じような表情の役ばかりやっている気がするディカプリオが今回は抑制した演技なのもよかった。
【2】MINAMATA ミナマタ(2021年)
ジョニー・デップが写真家ユージン・スミスを演じた伝記ドラマ(Based on True Eventだったかな)。
ビル・ナイがいい感じに作品の「重し」になっていた。
音楽は坂本龍一が控えめに担当している(いわゆる「MINAMATAのテーマ」とかはない、なかったはず……でもやはりよい)。
【3】Saltburnソルトバーン(2023年)
監督:エメラルド・フェネル
出演:バリー・コーガン、ジェイコブ・エロルディ、ロザムンド・パイク
131分/Amazon Prime Video/2023年12月22日より配信 https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CKLX482F/
エメラルド・フェネルの長編監督第2作め。
序盤はオックスフォード大学を舞台にまったく楽しくなさそうな学生生活が描かれるが(私個人の感想です)、もちろんそれだけでは終わらない、そう易々とは観終わらせてくれない。
主な登場人物はオタクっぽいオリバー(学力あるけど資産ない家の生まれ)と色男(この言い方、古い?)で資産家一族のフェリックス。
導入のオリバーの短い独白のあと、物語が始まるなり英国訛りの英語に包囲されて、まるで新大阪駅を降りた瞬間に吉本のまちに来たと感じさせるような関西弁に包囲される感覚を思い出す(英国人にも関西人にも悪意なしですよ、念のため)……のですが、オリバーもフェリックスもけっこう言葉遣いはアメリカ英語になっているあたりも、まあそれはそれで現代を舞台にしているのでリアリティある。激昂するとイギリス英語が強くなるのもリアルさあふれる。
そしてまったく楽しくなさそうなオリバーの学生生活はフェリックスによって変化にさらされてくるわけなのですが、そこから先は観てのお楽しみとします。
例えると3本脚の椅子に座らされているような、そんな不安定で不穏な感じで話は進んでいきます……。
撮影は美しく風景と人物と英国文化を映してもいる……のですが、決して「眺めのいい部屋」のような王道の英国映画を期待してはいけない。しないほうがいい。「そういう観客が思っているであろう英国らしさってのをひねりにひねってみたのよね、まあ、私なりに」というフェネルの企みが根っこに潜んでいる。
まだ30代で、まだ2作目。この監督こそが2023年の「恐るべき子供たち(アンファン‐テリブル)」なのではないだろうか。
ソルトバーンはオリバーが訪れるフェリックスの一家が所有する広大な土地の名前。
【4】ジョーカー(2019年)
ちょっと観るのに体力(耐久力?)が必要な気がしたので、ずっと「こころのウォッチリスト」に待機となっていた作品。
このタイミングで観てよかった。
スコセッシが撮ったみたいだと言っていたひとがいた。そしてそれゆえにスコセッシを超えられていないとも(なかなか厳しいこと言うね)。
スコセッシがまだまだ現役で本人が死ぬまでやると言っているので、そういう意味では方向性は同じでも、凌ぐ気概でやって欲しいところなのですが、そういわれると確かにどこかタクシードライバーを感じさせる雰囲気なども……と思ったら、ばっちりオマージュあり。
【5】THE BATMAN ザ・バットマン(2022年)
ちょっと勝手にフランク・ミラーのBatman:Year One(というDCグラフィック・ノベル作品)をベースにしていると思い込んでいたんですけど、違っていました。
そして鑑賞後に海外の作品批評文のタイトルにありそうなんだけど、”THE DARKEST and one of THE BRIGHTEST…THE BATMAN”が浮かんだ。先に英語で考えたので日本語にすると感じが変わるんだけど、「もっとも深い闇を纏った、輝きにあふれるバットマン映画」でしょうかね。画面はものすごく暗いけど。
どこか「ジョーカー(2019年)」と対になる部分あり。この件(対になる部分ありますか件)はマット・リーブスに尋ねてみたいです。
その2■ハッピーでエンタメだけどそれだけじゃないぜ■
【1】バービー(2023年)
オッペンハイマーからの思わぬ流れ弾でつまらないケチがついたけど、ここ最近で最高の作品のひとつ。
性差に配慮、人種に配慮、政治に配慮……つまらぬ「配慮」が映画をつまらなくした、このおかしな現実に言葉で文句をつけるのではなく、作品で軽々と超えてきたのがすごい。
インテリジェンスや才能はこう使うべきですね。
その3■記念作だけじゃない帰ってきたインディーがよかった■
【1】インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023年)
帰ってきたインディ! これで4作目をなかったことにできるのが何よりもうれしい!
▼ここから先はBEST選出作品ではないけど観たログ(BEST選出に際して書き出してみた映画)▼
選外その1■あ、こういうのもいいですよね■
【1】ブレット・トレイン(2022年)
つくっている側が楽しんでいるのがいいですね、もうそこに尽きる。
【2】ザ・フラッシュ(2023年)
これもやりたいこと全部入れときます的映画。スタバでいうと、ダークモカチップフラペチーノのベンティサイズ(最大サイズ)にシトラス果肉とチョコレートソースを追加したような感じ。
【3】ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年)
1作目と2作目のやんちゃな感じは控えめで、これで完結する3部作をまとめにきたような感じもありますが、「時間返せ、カネ返せ」とは言いませんよ、ワタクシは。
【4】アントマン&ワスプ:クアントマニア(2023年)
いまの「MCUの迷い」がまるごと凝縮されてしまったかのような不幸はありますけれども、これも「時間返せ、カネ返せ」とは言いませんよ、ワタクシは。
【5】MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年)
あれ、邦画唯一かな? マキタスポーツさんが、もうばつぐんによかった。
選外その2■いわゆるサスペンスとかミステリーとかが好きなのです■
【1】ナイブズ・アウト: グラス・オニオン(2022年)
2作目。1作目からトーンダウンせずに短い期間(2年)でちゃんと楽しめる作品提供はうれしい。この調子で2年インターバルで続けて欲しい。
【2】オリエント急行殺人事件(2017年)
ケネス・ブラナーがちゃくちゃくと再映像化している名探偵ポアロの初作(すでに3作品が公開済み)。このひと(ケネス・ブラナー)はシェイクスピア俳優として超一流だし、監督もやるし、さらには僕の知らないうちにSirつきになっていたし(もう10年以上前から、らしい)、なかなかどうして隅に置けないひとなのですが、ようやくこのシリーズを見始めました。
とにかく発音と発声がすごくよいので、英語を学ぶならばこのひとの映画がいいかと思う。作品の話から少しはずれましたけれども。
【3】クーリエ:最高機密の運び屋(2021年)
カンバーバッチ主演にハズレなし……とまではいかないですが、大きなハズレはない気がします。ということでテーマ的にも好きな内容でした。
選外その3■なんども観てしまう音楽絡みのドキュメンタリー■
【1】すばらしき映画音楽たち
【2】ようこそ映画音響の世界へ
【3】サウンド・オブ・007
【4】デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム
【5】アメリカン・ユートピア ※トーキング・ヘッズ時代の曲のよさが際立つ!
【6】ジギー・スターダスト:Ziggy Stardust and the Spiders from Mars ※全曲入りの完全版がついに出ましたので買いました!
選外その4■好きな作品なので時折りついうっかり観直してしまうもの■
【1】ミュンヘン Munich ※私にとってスピルバーグの好きなところがはいっています。
【2】ファム・ファタール ※デ・パルマ作品では埋もれがちですが好きなんですよね。
【3】LE SAMOURAI:サムライ ※アラン・ドロンとジャン=ピエール・メルビルだものね。
【4】ハンガー ※ボウイとドヌーブでトニー・スコットの初作だものね。
【5】地球に落ちてきた男 ※ローグ監督でボウイ主演だものね。